和泉屋本店について

和泉屋本店の歴史

和泉屋本店は明治四年、当時の新治県潮来村にて和泉屋佐七により創業いたしました。当時の潮来村は下総の佐原と並ぶ水運の要所で、東北諸藩から江戸へ運送される米、海産物、材木、その他の物資は太平洋を船で南下し、銚子から利根川を遡上し潮来、佐原を経由して江戸へ運ばれました。そのため最盛期には年間400隻もの荷船が出入りしたといわれます。その繁栄ぶりは、水戸藩が御用金制度をはじめた元禄13年(1700年)に、潮来の商人の献金額が水戸藩全体の三分の一を占めたことからもうかがい知ることができます。

潮来が水運の基地として栄えた時期には遊郭や引出茶屋が軒を連ねる賑わいぶりで、江戸方面から多くの文人墨客が来訪し、葛飾北斎や渡辺崋山もこの潮来の地で数々の名作を残しています。

潮来は古くからあやめの郷としても知られており、江戸時代から多くの観光客が訪れておりました。現在でも、水郷潮来あやめ祭りとして、例年6月10日頃には多くのお客様があやめの花を楽しんでおります。園内には、約500種類100万株のあやめが植えられており、見ごろを迎えると一面に咲き誇ります。

また、鹿島神宮や成田山新勝寺に参拝する参拝客がこの潮来の地で休憩をとり参宮するため、江戸時代より多くのお客様がこの潮来を往来しておりました。宿場町としても、旅館が川沿いに立ち並び風情豊かな街でございます。

そのような時代背景のなか、初代 和泉屋佐七が潮来を訪れるお客様になにかお土産を届けることはできないだろうかと考え、潮来村界隈で収穫されていたらっきょうや瓜を保存食として商品化したものが、現在のお漬物でございます。

さらに、この潮来、佐原は日本有数のお米の一大産地となっており、そのお米を利用した酒造りも古くから行われております。潮来市では、文化元年(1804年)に初代 兼平常七氏により創業された愛友酒造株式会社がございます。和泉屋本店では、愛友酒造株式会社より酒粕を冬の時期に毎年仕入れ酒粕床をつくり、じっくりと時間をかけて発酵させております。初めは白い酒粕ですが、発酵が進むにつれべっこう色の酒粕へと変化していきます。このべっこう色の酒粕を用いて製造した商品が和泉屋本店の奈良漬になります。創業当時はこの奈良漬がたいへん人気があり、保存食として重宝されておりました。

時代がすすみ、昭和に入ると大根の栽培がさかんに行われるようになり、たくあんなどの大根を用いた商品もご愛顧されるようになりました。しかし、第二次世界大戦がはじまると、男衆は戦地に出兵したため、残された者で漬物の製造を行っていたと日記に書かれております。そのため、商品数も数品目でわずかな商いで難をしのいだそうです。

戦後になると、高度経済成長期をむかえ、鹿島臨海工業地域の開発もすすみ多くの移住者が増えてまいりました。そのころ、製造体制を整えるため、潮来市に潮来工場、行方市青沼に青沼工場を建設いたしました。これにより、ごぼう、大根、らっきょう、生姜、きゅうり等を安定的に漬け込める設備が完成し、商品の供給体制が整いました。現在では、潮来工場と青沼工場にて、下漬から製品化までのお漬物製造の全工程を行っております。

和泉屋本店では、創業当時より野菜の発酵に関する伝統的技法が伝わっておりますが、私たちは現状に甘んじることなく日々改良と研究を重ね、より良い商品づくりを目指しております。令和の時代に入り今一度発酵に関する技術の見直しとして大幅な発酵過程の改良を行いました。それに伴い、以前より良質な野菜の発酵を行うことができるようになり、より上質なお漬物をご提供できるようになりました。

最後に私たちは、日本人の食文化として、古くから築かれてきた発酵に関する技術をより磨き上げ、お客様に喜んでいただける「価値のあるお漬物」をお届けできますようこれからも励んでまいります。

発酵させる技術

和泉屋本店では、野菜をよく発酵させる発酵技術を有しております。実は、野菜をよく発酵させることは難しく、漬物を漬ける多くの方は野菜を腐敗させてしまっていることがよくあります。発酵と腐敗とは何が違うのか?簡単に説明すると、発酵とは人にとってうれしい物質が生成されることを言い、腐敗とは人体に有害な物質が生成され食品が腐ってしまうことを言います。

具体的には、発酵とは、微生物(乳酸菌、麹菌、酵母菌など)の働きによって、食物が人間にとって有益な物質に変化していくことを言います。発酵食の代表的な例としては、漬物、チーズ、納豆、鰹節など。発酵飲料の代表的な例としては、日本酒、ビール、ワインなど。発酵調味料の代表的な例としては、醤油、みそ、本みりんなど。数を上げたらきりがないほど発酵食は、私たちの食生活の一部になっております。

発酵食を毎日食べることは、多くのメリットがあり、栄養が体内へ吸収されやすい、免疫力が高まる、若々しさをサポートしてくれる、代謝がアップし生活習慣病の予防になる、ストレス軽減に役立つなど、私たちが受ける恩恵は計り知れません。

ではどのようにすれば、野菜をよく美味しく発酵させられるのか?それは、野菜表面についている微生物と食塩を良く結合させ、しっかりと漬け込むことで、野菜を腐敗させることなく、乳酸菌たっぷりの美味しいお漬物に変化させることができます。

言葉で説明することは簡単ですが、実際にこれを大量の野菜で行うためには熟練の発酵技術と設備が必要になってきます。ここで、最も大切なことは、腐敗ではなく、良質の発酵をいかに順調に進ませるかということです。

和泉屋本店では、この野菜の乳酸菌と酵母による発酵過程を一つひとつ丁寧に手作業にて行ってまいります。その為、大量の商品を一度に製造することが難しく、商品が品切れとなる場合がございます。その点ご了承願います。

私たちはこれからも、お客様により美味しいお漬物をお届けできますよう、誠意を持って励んでまいります。

<参考文献> 東京農業大学 名誉教授 農学博士 小泉武夫 著 より参照

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